(コラム&エッセイ)忘れられないすすきのの名店・迷店 第4回「アジアンカフェ ホアンタム」
私が◯十代なせいなのか、読者さんからの反響が思った以上に大きくてビックリしている90年代のすすきのを懐かしむこのコーナー。
今回は、すすきの深夜族に愛されたあのお店たちを振り返ってみようと思います。
90年後半、初めてすすきのに降り立った私は、ざっくりいうと夜の仕事をしておりました。
閉店作業を終えて、売り上げの精算を済ませると深夜4時を軽く回っており、腹減ったなぁと思っても、やっているお店と言えばラーメン屋か吉牛とかのチェーン店がほとんど。
たまの楽しみは一円やで海老天を追加で乗せまくるとか(笑)
すすきので働いている人にとって、深夜に腹を満たしたり、お酒が呑めたりするお店の開拓は必須科目の一つでした。
前回紹介したバロンなんかもまさにそういうすすきの夜遊び族にうってつけのお店だったわけです。
当時事務所がすすきののやや西よりのところにあったのもあって、即座に気になるお店を見つけました。
「アジアンカフェ ホアンタム(南5西5)」です。
当時のすすきのの中では、中心部から少し離れた西5丁目の西端に位置し、路面店でしかも結構なキャパ、奥のボックス席と手前のロフト席、タイやベトナムを彷彿とさせる内装。
フードも、いわゆるアジアン系(ナシゴレン、ミーゴレン、ガイヤーン、フォー、チェー)から、餃子などの中華料理やはては韓国料理まで、アジア全般を網羅していて女の子ウケも相当よかったです。
札幌にもこんなお店があるんだぁ….と感心を通り越してちょっと感動したことを覚えています。
首都圏でも大流行中のデザイナーズレストラン風のセンスありまくりのこのお店は連日連夜大盛況で、しかも朝6時くらいまでやっていたので本当に重宝しました。
このホアンタムが実はグループ店で、そのグループ名がテスカンパニーという名前であるということを知るのにそんなに時間はかかりませんでした。
当時のテスカンパニーは、お店ごとにチャンネルを変えており、そのどれもが格好良くて美味しくて、そして流行っていました。
スペイン料理の「ロスガトス(南5西5)」、ピザが旨い「ル タブー(南7西3)」なんかもすすきの夜遊び族から絶大な支持を受けて人気のお店でした。
どのお店も、テーマに合わせたメニュー、内装、外装、ロゴ、ユニフォームとこだわっていて、先週はホアンタムだったから今日はガトスにしよう、と色々回るのも楽しかったです。
当時の札幌の飲食店開業を目指す若い経営者たちがこぞってテスカンパニーをお手本にしていました。
ご存知の方も多いと思いますが、当時はタスコシステムも隆盛を誇っており、おしゃれな夜遊び族に特化した形でテスカンパニーがそれを追随するような図式でした。
結果として、両社ともに倒産してしまうわけですが、今札幌で一線で活躍している店主や料理人、サービスマンなど様々な人材は、この両社出身の方が多く、その遺伝子は今も生き続けているのです。
今、ホアンタムのあった場所には何度かの屋号変更や店子の入れ替わりを経て、居酒屋ゴリラさんが頑張っています。
当時のホアンタムほどの盛況ぶりではないですが、結構お客さんも入っているようです。