(コラム&エッセイ)忘れられないすすきのの名店・迷店 第2回「七五三の出前の彼」
かつて、七五三という変わった店名のラーメン屋さんがありました。
七五三と書いて「しめ」と読むそうです。
私も正式な読みがなを知ったのは、七五三のことを知ってから数年経ってからでした。(知った後も3回に1回くらいは「しちごさん」と呼んでましたし)
七五三は南4西5丁目、今「天真爛漫」のある場所にありました。
ラーメン以外にも、チャーハンや餃子、キクラゲ炒めなどの中華メニューがあって、そのどれもが結構旨いという、ありそうで中々ない奇跡的なお店でした。
七五三のラーメンや中華メニューについては、口コミ系サイトや個人ブログなんかでも知ることが出来ますので、ここではいかにもすすきの密着サイトならではの切り口で語りたいと思います。
七五三の何が凄かったかと言うとそれは……
出前の兄ちゃんの身体能力
であります!
出前と聞くと、漫画なんかでオカモチを片手に下げながら、自転車をふらふらと片手運転する様を思い浮かべると思います。
七五三の出前の兄ちゃんも、想像通りの片手オカモチスタイルで自転車を漕いでいたのですが、とにかく全くふらつきません!
一見メガネをかけてどちらかというと地味な見た目なのですが、よく見ると肩周りなんかもビルドアップされていて、その地味めな顔からは全く想像つかないくらいのナイスマッチョ!
今思い返しても、彼の身体能力はすすきのでもトップクラスの高さだったと思います。(出前の兄ちゃんつかまえてする評価じゃないけど)
そして、ある日、彼のさらなる凄さを思い知る光景に遭遇するのです。
大雪の降りしきるすすきのの路地から、オカモチを持った彼が現れたのです。いつも通りの飄々としたスマイルで、ぐいぐいと自転車を漕いでいるのです。
しかも、路面は凍ってツルツルで、歩くだけでも危なっかしいレベルの危険地帯。
でも、彼はいつも通り片手におか持ちで自転車を片手運転。
そのサーカスばりのパフォーマンスに、ある記憶が蘇りました。
それは今から35年程前、テレビで初めてタイガーマスクvsダイナマイトキッドを観たときの衝撃の記憶です。
後に4次元殺法と呼ばれたその規格外の技の数々は、子供はおろか全世界のプロレスファンを一発で虜にしたのでした。
七五三の出前の兄ちゃんのその4次元オカモチ殺法(なんじゃそりゃ)見たさに、わざわざ出前して建物の前で待ち伏せしたりしました。(迷惑)
そんな七五三も閉店し、彼の出前姿ももはや見ることは出来なくなりました。
でもある時、お祭りのチャリティープロレスに、パンダのマスクをかぶった覆面レスラーを見かけました。
パンダマスクのコミカルな動きの中に、七五三の彼の姿がだぶって見えました。
もちろん、パンダマスクの正体が誰なのか?知る由はないのだけれど、彼が颯爽と走っていた姿とともに、あの頃のすすきのの記憶が蘇って来たのです。