ありそうで無かったすすきの×真夜中×パン屋 噂の注目店「夜のしげぱん」に行ってみた
人でごったがえすすすきのの週末、旧友のA子と毎月末恒例の「こぢんまり女子会(女史会?)」という名の飲み会を開いた時のこと。
お互いの近況報告という名の実りのない恋バナに華を咲かせていると、いつもあっという間に時間が過ぎてしまい、そろそろ終電を気にする時間に。
実りがないからオチもないわけで、この日も変わらず話が尽きることはなかったんだけど、次の日お互い朝から仕事だったのを理由にその場はお開きにして、店の外に出た。
「締めに何か食べていこっか」
いつものようにA子から提案があった。A子の「何か」は口に出す前から決まっている。
私はそれを、今日の雰囲気で当てる、といういつもの儀式にとりかかっていた。
私の方は「何か」は実は決まっている。
「ラーメン」
年齢に合わせて舌もオヤジ化が進行している私とは違って、A子は20代前半といっても信じてもらえるほど今時のルックスで、先月なんか、黒服風がスカウトしてきたくらいだ。
あんまりしつこいから
「私たち 3◯才ですけど!」
と実年齢を街のど真ん中で、しかも大声で、カミングアウトするという羞恥プレイと引き換えに追い払った。
その時は、そのスカウトくんの驚いた表情を思い出して、にやけていたのだけど、
あとで実は「私とA子が同い年なことに驚いていたんじゃないか?」と急に正解が降りてきて
「今からさっきの奴を探し出して地獄を見せてやらないと、私の現世はおろか来世も浮かばれないんじゃないか?」
という残留思念で、二軒目のハイボールが、いつもより美味しくなかった。
ニンニク脂多めのガッツリ系ラーメンは、今日はおあずけ。何にしようか…と考えつつ歩いていると、ビル入口に伸びるちょっとした行列を発見。
ビル名を見てピピ~ンと思い出した。
市電の西線の方で、人気のパン屋さんが、すすきので夜中でも焼きたてパンが買えるお店を出したのをFacebookで見たところだった。
「夜のしげぱん」
その店名の通り、深夜でも営業しているパン屋さんで、すすきのにありながら焼きたてフカフカのパンが食べられるお店。
ラーメンの口から何とか切り替えようともがいていたので、この焼きたてパンの鼻をくすぐる匂いは、ずるいありがたい。
自然と鼻先が行列の先を覗き込むかたちになってしまう。
「ここちょっと気になってたし、買ってこうか?朝ごはんにもなるし」
A子も、この匂いにはやられたようだ。
4〜5組ほどの先客の後ろに並ぶことにした。
カップル、サラリーマン、スナックのママっぽい女性など、さすがすすきの、客層が豊かだ。
惣菜パンや菓子パン、バゲットに角食など、ざっと30種類くらいは並んでいて、どれもおいしそうだ。
豊富な品揃えのパンたちを、「どれにしようか~」と、悩みながら目で楽しんでいると、私たちの前のスナックのママ風が、エコバッグからはみ出るくらい爆買いしていった。
よく見ると、パンには「隊長」、「ニョロ」、「しぶさん」など、パンらしからぬ奇抜なネーミングが付いている。
(あとで調べたんだけど、店主の友人やお客さんからのアイデアを元に作ったパンに、そのまま発案者の名前をつけているんだそうで、このすすきの店で採用されたのもあるんだそうだ)
「夜の蝶」というミニクロワッサンは、味が色々あって、普通のバター味なんかのほかに、ショウガやワサビといった変ったのもある。
人気のカレーパンがラス2だったので、お互い1個ずつと、さっきのミニクロワッサンをいくつか、明日の朝用にと言い聞かせながら、さらにもう二個、「佐々木希」と「jinx」をチョイス。
結局お互いそれぞれラーメンと同じお値段くらいの量のパンを購入した。
A子がニヤケ顔で、買ったばかりのカレーパンを頬張りはじめた。
「温かいうちに食べないとね〜。こってりしたラーメン食べたかったけど、このカレーパンおいしい〜!」
「ラーメンでもよかったんかい!!」
と心の中でツッコミつつ、私もカレーパンを食べた。確かに旨いわこれ。
ちょうど食べきったころ、解散場所のすすきの駅の入り口に到着。
A子が地下鉄へと階段を降りるのを見送って、豊水すすきの駅に向かう道すがら、明日の朝用だったはずの「jinx」も食べてしまった。